【職人のひとりごと】北海道漂流記

2 月中旬。東京では春一番なのかと思うくらいの強風が吹き荒れる中、私は新千歳空港行き の飛行機に乗りこみました。 なぜ北海道かというと、フェニーチェクローゼットは北海道出身の阿知良さんを中心とし たお店のため、北海道在住の大ベテランの職人さんにも仕事をお願いしており(その歳なん と79歳!今年80歳になるそう!)、技術の向上を目指し手習いに行ったのです。 大ベテランの職人“チイ子さん”は50代からお直しの世界に入った職人さんです。 今ではウエディングドレスからレザージャケットまでをお直しだけではなく、一から作っ てしまう“生涯学び”まさにこの言葉がぴったり当てはまる方です。 もちろんメンズのテーラードにも強く、昔から阿知良さんの懐刀だったそうです。 今回そんなチイ子さんに手解きを受けたのは、“HERMES”のスカーフを“Leviʻs” のヴィンテージデニムジャケットの裏地として付けるという内容です。 私は高級ブランドを購入した事がありませんので、今回初めてエルメスのスカーフを隅か ら隅まで見てみたのですが、縁(ふち)の処理の綺麗なこと! こんなに固く細くしかも一定に巻いている、まずはそこに感動です。 そして!まつり縫いを繊細なシルクの生地を傷めないため1.0 センチと比較的広い間隔で しているにも関わらず崩れてこない! 縫製箇所だけでも興奮ポイントは沢山あるのですが、エルメスといえばの柄もやはり素晴 らしいのです。 エルメス、恐るべしっ! この作業の要は“美しい柄を最大限に活かすための裁断になります。 大きさの限られている1枚のスカーフを無駄にする事なく、ヴィンテージのデニムジャケ ットの経年変化に合わせて裁断をしていく。 チイ子さんにしかできない仕事です。 今回1着目として選んだものがまさかの一番大きなサイズで、限られたスカーフでどうし たら着分とれるか2時間いろいろと試行錯誤をしたのですがその日は裁断を諦め、後日チ イ子さんが今回起こしたパターンを色分けして集中して裁断をしていくことになりました。 主にチイ子さんが試行錯誤をしてくださり、この世に1着しかない素晴らしいジャケット が出来上がりました! (私はスカーフをデニムにつける作業をさせていただいております。) こちらのデニムジャケットはフェニーチェクローゼットの新たな試みとして、3月21日か ら店頭にてご覧いただけます。 ヴィンテージなので1着1着アタリのでかたや癖のでかたも違うため、全て2つと無いも のとなっております。 また全て手作業で大量生産が難しいため仕上がったジャケットから並べさせていただく予 定です。 ご縁のあった時にしか出会えない。 そんなジャケットを是非店頭にてご覧ください。

【職人のひとりごと】今更塩パンにハマる

フェニーチェクローゼットから徒歩5分ほどのところに、天然酵母のパン屋“トゥルナージュ”さんはあります。 このお店には私がフィッターをしていた頃から伺っているので何年通っているのかわかりません。 どれを食べても美味しいパン屋さん。 入口にあるたくさんの種類のベーグルは見ているだけで幸せな気持ちになります。 (ちなみに私のお気に入りは きんぴらベーグル です!) そして何より天然酵母だからか、とにかく“生地”が美味しいんです。 ただ美味しいだけではなく、胃がもたれない、、、小麦を食べると年齢を感じてしまう私にはとてもうれしいパン屋さんです。 だけどずっと手に取らなっかったパンがあります。 それは塩パン。 シンプルすぎる見た目から、ただの塩味なんでしょととわかった気になって10年近く通っている中で一度も食べたことがありませんでした。 しかもいつも最後まで残っていて、やっぱり私の見立ては正しい。とさえ思っていました。 そんな風に一生食べることのないパンだと思っていた塩パンですが、先日トゥルナージュさんに伺うとまさかの塩パンしかない! 時間も遅かったのでやっぱりかとも思いましたが、これは逆に運命かも!と食べてみることに。 見事タイトルにしたようにハマりました。笑 嚙んだ瞬間、フランスパンよりも繊細で、焼きたてのクロワッサンよりも無骨な“サクッ”が聞こえ一瞬で虜に。 バターの香りと口に入れた時の食感、気持ち程度に添えられてるだけなのに鋭く主張してくる粗塩全てが完璧で、これはきっとパン界の“THE ROW”なのだと確信しました。 シンプルな中に全てが完璧で美しい調和がある。 技術のフェニーチェクローゼットを目指しているのにも関わらず、シンプルさの奥に秘められた技術力に気付けないとは反省です。 こちらのパン屋さんは、ロンハーマン千駄ヶ谷店さんのある交差点から2分ほどのところにあります。 フェニーチェクローゼットのご予約の前後や、ロンハーマンさんに行かれた際にはぜひ立ち寄ってみてください。 ご注意なのが日にもよりますが2時を過ぎると人気のパンは売り切れています。 (きっと塩パンは残っているはずです。笑) 1時まではほとんどの種類があると思いますので、気になる方は早めの時間に行くことをおすすめいたします。 追記 塩パンにハマりすぎて連日食べていたのですが、購入した翌日の朝ごはんにしてみたところ、サクッというよりはしっとりとした、食べず嫌いをしていた時に想像していたパンにになってしまいました。 それはそれで美味しかったのですが、是非パン界の THE ROW を体験していただけたらうれしいです。 トゥルナージュ 神宮前店 東京都渋谷区神宮前2丁目15-15 岡山ビル ※日曜、月曜 定休日